環境緑化新聞  2012年(平成24年)12月15日

赤穂市に【水琴窟工房】を訪ねて

赤穂といえば、赤穂浪士。泉岳寺となれば、浅野家の菩提寺。その赤穂の地で水琴窟の音を広めた男、それが水琴窟工房・長棟造園の長棟さんである。義士に敬慕の念を込め込めて鎮魂の音を奉納する造園家とはどんなお人なのか。お話を聞いた。

高梁市の「吹矢ふるさと村」で最高の水琴窟と出会ったのがきっかけだった。次いで姫路城での発掘品を参考に地上型水琴窟の開発に没頭、手軽に現代の庭園に取り付ける作品が評価され、兵庫県技能顕功賞を受賞した。これに背中を押される形で、一坪の庭創りから管理まで広く手掛けている。

 

長棟さんが最高の水琴窟に出会ったのは岡山県高梁市の吹矢ふるさと村の広兼邸。その水琴窟の音質・リズム・甕中の共鳴音は最高だった。庭師の長棟さんは自然を生かした茶庭や京都の坪庭に匹敵する芸術品だと思ったという。長棟州彦さん、父親の代から40年間造園業を営んでおり、茶道・書道・陶芸などを趣味とする。地元に伝わる幻のやきもの「赤穂雲火焼」を復元し、作陶活動に励んでいる。

常に進化を求め考案することが大好きな技術者で、環境緑化に配慮し開発した木製地下支柱「エコルート」は発明協会の近畿経済産業局長賞を受賞している。

長棟さんは36年やってきた陶芸の経験を生かし、水琴窟についても、甕・鳴り板にこだわる。

いろんな窯元を訪れ、水琴窟に最適な甕を見つけたという。地上で使う水琴窟は音質だけでなく、甕表面の柄、模様にも遊び心のある甕を使用する必要がある。

地上型にこだわった理由は他にもある。現代の庭園に残っている水琴窟の多くは、竹筒を耳にあてないと聴き取れない小さな音のものや、メンテナンスができずに音の聴けない状態で放置され、〝鳴らずの水琴窟〟となっているもの多い。

そこで長棟さんは、水琴窟を従来のものと違って手軽に現代の庭園に取り付けられればおもしろいと考え研究を重ねた。

こうして従来の水琴窟の欠点を改善し、簡単施工でいつまでも美しい音色が楽しめる長棟式水琴窟を完成させた。長棟式水琴窟の特徴は、大きな水滴を作る鳴り板は、兵庫県の支援を受けて、石・陶器の性質を分析し、飽きのこない落ち着きのあるリズムを奏でるよう工夫をしている。音質は高く澄んだ水琴窟で、音量は竹筒が無くても聴き取れる大きな水琴音となった。

リズムも飽きのこない落ち着きのあるリズムを奏でるよう工夫されている。

共鳴は甕内の共鳴音をそのまま地上へ伝える。

時間も1度の水かけで長い時間水琴窟音を楽しめる。メンテナンスは甕内の清掃がラクで長く美しい水琴窟音が楽しめる。心癒す水滴のリズム、共鳴に優れた水琴窟、赤穂から日本の庭園文化を広めたいと意欲をも燃やしている。

長棟造園(赤穂市塩屋)が開発した水琴窟を「大勢の人に日本の庭園文化に興味を持ってもらえれば」。

長棟さんは以前から地上に置けて大きな水音を響かせる水琴窟の制作に挑戦。アイデアが2005年度の県の景観園芸産業ビジネスモデル実証支援事業に認定され、2006年5月から本格的な開発に乗り出した。

水滴を甕に導く円盤状の石である「鳴り板」を工夫することにより水がゆっくり動き、大きな水滴を形成するように板を磨き上げた。板には数本の溝を刻み、小さな水滴もできるようにし、大小の澄んだ音がリズミカルに響くようにした。

音を響かせる甕は、姫路城での発掘品を参考に大きさや厚みを研究。2メートルほど離れた場所からでも水音が聞こえる共鳴力に優れた水琴窟を完成させた。洗面所に使っている一般の家庭用もある。「日本の音文化が手軽に楽しめる」として関心を示す外国人も多いという。

~ 忙しい現代の人にゆったりとした時間を過ごしてほしい~